フィクションを哲学する

くだらなくてもいいじゃない。

『ストーリーとディスコース』第二章「ストーリー—出来事」前半(~p.73) メモ

(こっちはガチで自分用のメモとして使用するので、読んでも内容がわからない可能性があります。)

 

  • ディスコースにより選択・配列されたストーリーをここでは「プロット」と呼ぶ。
  • ところで、物語論における出来事とは何か。
  • 出来事は<行動>と<偶発的な事象>に分けられる。
    • 行動:動作主が(受動者に)もたらす状態の変化。特にプロットにとって意味深い場合、動作主or受動者は登場人物と呼ばれる*1
    • 偶発的な事象:登場人物or(焦点化された)存在物が物語の目的語となるような出来事。
  • ここで主語、目的語と言っているのは物語の論理上の話で、文法におけるものとは異なる。

2.1 連鎖、偶然性、因果関係

  • 物語中の出来事は基本的には何らかの結びつきがある。
  • その結びつきは因果関係にもとついていると考えられている。
  • 例:「王が死に、そして女王が死んだ」はただ単に出来事を並べただけ(ストーリー)だが、「王が死に、そして女王が悲しみのあまり死んだ」は、因果関係があるため、プロットとなる。
  • ただ、読者は前者の例においても物語構造を探し、必要であれば文脈を補って解釈してしがちである。
  • 蓋然性:既に提示された部分から続くこと(あるいは結果として起こること)と、他の部分につながることの関係*2
  • 物語では可能性がどんどん減っていき、最終的には必然的な結末にたどり着く。
  • 現代の作家は因果関係以外の結びつきを模索している(「偶然性*3」とか?)。
  • プロットは二種類ある。
    • 解決的プロット:何かが解決に至るプロットで、疑問?とその答えの提示が行われる*4。顕在的プロットよりの時間の順序に対する意識が強い。
    • 顕在的プロット:出来事の解決ではなく、事態が白日のもとに晒されることを重視する。顕在的プロットでは登場人物が重視され、存在物の詳細な描写が行われるが、出来事についてはあまり重視されない(登場人物の性格などを提示するために出来事が語られる)*5

2.2 真実らしさと動機づけ

  • 物語理論においてそこにある慣習を理解するのは大事。
  • 読者は慣習を「自然化する」。これによって慣習を理解すると同時に、忘れる、意識しなくなる。
  • 「自然化」の概念は読者のテクストの空所を埋め、一貫した物語として理解する能力の説明になる*6
  • ただ、何が「自然か」は文化・時代で大きく異なるため、深層レベルを理解するためには読み手が合わせる必要がある。
  • 一般的な行動基準で推量れない行為に関しては、何らかの説明がなされる(「一般化」)。これにより、当の行為はもっともらしいものとして許容される。
  • ただ、実際は説明が必要なことはあまりない。
  • 映画史を紐解いてみると、行動 の真実らしさの基準は下がっている(読者の理解度が上がった?)。

2.3 核と衛星

  • 物語の出来事はその重要度から階層構造を成す。
    • 核:プロットに欠かせない主要な出来事。物語構造における結節点であり、核から物語は(可能性の話になるが)枝分かれする。
    • 衛星:あんまり重要でない出来事。核のような選択は伴わない。核の選択の結果生じ、骨組みに対する肉付けの役割を果たす。
  • 理論は我々が普段どう読んでいるのかを説明するためのもので、批評の文脈から反論(「より高度な読みを可能にする道具として使えないじゃん」)されても困る*7

2.4 ストーリーとアンチストーリー

  • 古典的な物語とモダニスト物語の違いが核/衛星の概念によって説明できる。
  • 核による選択のネットワークが古典的な物語の構造であるとするならば、<アンチストーリー>はあらゆる選択を妥当であるとみなすものと定義できる*8
  • 『八岐の園』では、すべての可能性を網羅しつつ進行する小説を紹介している。ただ、このような小説も当然ながら選択の連続性を前提にしているからこそ可能になっている。
  • 『嫉妬』では、語り手(登場人物)自身の存在(と行動)が陳述されない。読者は他の描写から間接的に語り手の行動を推測するしかない。

2.5 サスペンスとサプライズ

    • サスペンス:予表(次に何が起こるかの暗示)により、読者にのみ生じる不安を伴う不確定性(つまり、登場人物はサスペンスについて知らない。)。
    • サプライズ:読者も登場人物も知らない出来事が起こり、驚くこと。
  • サスペンスによる不確定性は部分的なものに過ぎないが、それは読者に緊張と期待をもたらす。
  • 物語がすべてサスペンスの原理で動いているわけではない。
  • また、サスペンスとサプライズは互いに補完し合う関係で、両者は物語で複雑に作用し合う*9

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:逆に登場人物から行動を特徴づけても良さそう。

*2:尤度に近い概念?

*3:「その存在、発生、性質がまだ明らかにされていない何かに依存している」

*4:古典的という位置付けになっているが、現代のストーリーでも伏線などと呼ばれて結構このタイプは重視されているように思われる。

*5:こちらはこちらで現代の物語作品によく見られる(と言うか萌えアニメとかまさしくそんな感じじゃん)。

*6:話が急に転換しているのを感じる。前後の「自然化」で言いたいこと全く違うけどいいの?

*7:個人的には批評においても十分理論は役に立つと思っているが、どうなのだろう。

*8:選択肢が用意されているゲームはアンチストーリー的なのか?(可能性を網羅する体験は確かに一本道の物語と感覚は違う気がする。)

*9:具体例では、ストーリーのサスペンス(ストーリーによってもたらされる、登場人物の心情と重なる)、ディスコースのサスペンス(ディスコースによってもたらされる、登場人物が認知できない)という二つのサスペンス(+二つのサプライズ)によって物語の緊張感が説明されている。特筆すべきなのはディスコースのサスペンスがストーリーではサプライズになっていると言う点だろうか